大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島地方裁判所 昭和61年(わ)560号 判決

国籍

韓国

住居

広島県福山市霞町一丁目八番二号

パチンコ店経営

山本祥桓こと裵祥桓

一九五一年一〇月一五日生

国籍

韓国

住居

広島県福山市霞町一丁目七番四号

会社役員

山本仙吉こと

裵海植

一九一六年九月二八日生

右両名に対する所得税法違反各被告事件について、当裁判所は検察官萩原三郎出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

被告人裵祥桓を懲役一年及び罰金一億円に、同裵海植を懲役一年六月に処する。

被告人裵祥桓において右罰金を完納することができないときは金二〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判確定の日から五年間、それぞれの懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人山本祥桓こと裵祥桓は、広島県福山市南手城町一〇七〇番地においてパチンコ店「日栄会館福山店」を、同県三原市城町六一〇番地においてパチンコ店「日栄会館三原店」をそれぞれ経営し、その業務全般を統括しているもの、山本仙吉こと裵海植は、右パチンコ店二軒の売上金を管理しているものであるが、被告人両名は共謀のうえ、被告人裵祥桓の所得税を免れようと企て、右パチンコ店二軒の売上の一部を除外するなどの方法により、右所得の一部を秘匿したうえ

第一  昭和五四年分の実際の所得金額が別紙第一修正損益計算書記載のとおり一億九五八九万六九六〇円で、これに対する所得税額が別紙第一税額計算書記載のとおり一億三一二二万五八〇〇円であるのにかかわらず、昭和五八年三月一五日、広島県福山市三吉町四丁目四番八号所在の福山税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年度分の所得金額は一五四五万七二七五円で、これに対する所得税額は四一一万五〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税一億二七一一万八〇〇円を免れた

第二  昭和五八年分の実際の所得金額が別紙第二修正損益計算書記載のとおり一億二九九九万六一七八円で、これに対する所得税額が別紙第二税額計算書記載のとおり八一六七万二四〇〇円であるのにかかわらず、昭和五九年三月一二日、前記福山税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年度分の所得金額は八七七万四八八五円で、これに対する所得税額は一四〇万七〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税八〇二六万五四〇〇円を免れた

第三  昭和五九年分の実際の所得金額が別紙第三修正損益計算書記載のとおり一億三五四七万一二七四円で、これに対する所得税額が別紙第三税額計算書記載のとおり八一三三万七五〇〇円であるのにかかわらず、昭和六〇年三月一五日、前記福山税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年度分の所得金額は一八八八万九三三六円で、これに対する所得税額は五五一万三五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税七五八二万四〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人両名の当公判廷における各供述(全事実)

一  被告人裵祥桓の検察官に対する供述調書(全事実)

一  被告人裵祥桓の大蔵事務官に対する次の各供述調書

1  昭和六〇年五月二一日付(検22号)、同月二二日付(検23号)、同月二三日付(検24号)、同月二八日付(検25号)、同年八月一日付(検27号)、同月八日付(検査28号)、同月二二日付(検29号)、同年九月二日付(検30号)、同月二七日付(検31号)、同年一一月一二日付(検32号)各供述調書(以上、全事実)

2  昭和六〇年一一月一九日付供述調書(検33号)(第一事実)

3  昭和六〇年五月三〇日付供述調書(検26号)(第一事実)

一  被告人裵海植の検察官及び大蔵事務官(検35から同49号まで計一五通)に対する各供述調書(全事実)

一  山本善子こと朴二今の大蔵事務官に対する昭和六〇年五月二四日付、同年八月二二日付各供述調書(全事実)

一  山口成美の大蔵事務官に対する昭和六〇年七月三一日付、同年八月七日付各供述調書(全事実)

一  大原勉の大蔵事務官に対する各供述調書(全事実)

一  検察事務官作成の捜査報告書(全事実)

一  被告人裵祥桓作成の「所得税の修正申告書」謄本三通(検6号=第一事実、検7号=第二事実、検8号=第三事実。以上、いずれも山本祥桓名義)

一  福山税務署長作成の

1  「所得税の青色申告の承認取消し通知書」謄本(全事実)

2  「青色申告の取消決議書」謄本(全事実)

一  大蔵事務官作成の

1  脱税額計算書説明資料(全事実)

2  売上高調査書(全事実)

3  福利厚生費調査書(全事実)

4  給料賃金調査書(全事実)

5  利子割引料調査書(全事実)

6  雑費調査書(全事実)

7  青色申告控除額調査書(検60号・全事実)

8  不動産所得調査書(全事実)

9  利子所得調査書(全事実)

10  配当所得調査書(第一、第二事実)

11  譲渡所得調査書(第三事実)

12  繰越損失額調査書(第一事実)

13  現金調査書(全事実)

14  預金債権調査書(全事実)

15  出資金調査書(全事実)

16  土地調査書(第三事実)

17  事業主貸・事業主借調査書(全事実)

18  借入金調査書(全事実)

19  借受金調査書(全事実)

20  元金調査書(全事実)

21  所得控除調査書(全事実)

22  配当控除調査書(全事実)

23  源泉徴収税額調査書(全事実)

24  調査事績報告書(検79号、全事実)

一  領収済通知書謄本三通(検4号)

(法令の適用)

一  罰条

判示第一乃至第三の各事実につき、各刑法六〇条、所得税法二三八条一項(被告人裵祥桓については、更に所得税法二三八条二項)

一  刑種の選択

被告人裵祥桓については、懲役刑と罰金刑を併科

被告人裵海植については、懲役刑選択

一  併合罪加重

懲役刑につき、各刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(いずれも犯情の最も重い判示第一の罪の刑に加重)

罰金刑につき、刑法の四五条前段、四八条二項(被告人裵祥桓)

一  労役場留置

被告人裵祥桓につき、刑法一八条

一  懲役刑の執行猶予

各刑法二五条一項

(量刑事由の要旨)

本件は、私利私欲のために、三年間にわたり、国民の基本的義務である納税義務を計画的に免れた反社会性の強い脱税事案で、その脱税額も合計約二億八三二〇万円と極めて多額であって、誠実な納税者に対する影響も無視し難く、犯情は全体として悪質というほかなく、懲役刑についても、実刑が充分考慮される事案である。

しかし、被告人両名とも、本件脱税を素直に認め、脱税分については、重加算税を含めてすべて完納し、現在では深く反省していること、これまでに罰金刑以外の前科はないことなど、被告人両名に有利な事情も存在するので、現段階では、納税義務者である被告人裵祥桓に対する罰金刑の執行による感銘力にとどめ、被告人両名に対する各懲役刑については、刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 荒木恒平)

第一修正損益計算書 自 昭和57年1月1日

至 昭和57年12月31日

〈省略〉

(したがって、昭和57年度の実際の所得金額は、修正総所得金額250、885、764円から繰越損失控除額54、988、804円を控除した195、896、960円となる。)

第一修正損益計算書内訳(事業所得)

〈省略〉

第一修正損益計算書内訳(不動産所得)

〈省略〉

第一修正損益計算書内訳(利子所得)

〈省略〉

第一修正損益計算書内訳(給与所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書 自 昭和58年1月1日

至 昭和58年12月31日

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(事業所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(不動産所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(利子所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(配当所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(給与所得)

〈省略〉

第三修正損益計算書 自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

〈省略〉

第三修正損益計算書内訳(事業所得)

〈省略〉

第二修正損益計算書内訳(不動産所得)

〈省略〉

第三修正損益計算書内訳(利子所得)

〈省略〉

第三修正損益計算書内訳(配当所得)

〈省略〉

第三修正損益計算書内訳(給与所得)

〈省略〉

第三修正損益計算書内訳(給与所得)

〈省略〉

第一脱税額計算書 自昭和57年1月1日

至昭和57年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

第二脱税額計算書 自昭和58年1月1日

至昭和58年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

第三脱税額計算書 自昭和59年1月1日

至昭和59年12月31日

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例